東北大学大学院薬学研究科長
岩渕 好治 東北大学薬学部・薬学研究科は1957年に設置された東北大学医学部薬学科を出発点として、1972年に独立した学部として開設されました。東北地方における唯一の国立薬学研究教育機関として、国内外の製薬・化学・食品・材料関連企業、大学、病院、公的機関などにおいて、研究開発、教育、医療、行政などの広い分野で活躍するリーダーを輩出してまいりました。物質と生命の関わりを調べて新しい薬を創り出し、その医療への適用により人類の健康と福祉に貢献できる薬学出身者には社会から大きな期待が寄せられています。薬は病気の治療において極めて重要な役割を果たしており、科学技術の進歩に伴いより優れた医薬品が次々と開発されています。しかし、がんや認知症をはじめ、未だ克服できない病気も多く、そして新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で露呈したように、新たな病気の脅威に迅速に対応する創薬研究力が求められています。さらに、医薬品の適正な使用には高度な知識と判断力が求められ、医療の現場で最先端の医薬品治療の専門家として活躍する人材育成にも大きな期待が寄せられています。本薬学部・薬学研究科は、医薬品をミクロからマクロまでの幅広い視点で捉え、薬学の発展に貢献できる人材を育成することを教育理念としています。2006年4月からは薬剤師教育の6年制が始まり専門科目講義が充実されるとともに約半年間の実務実習が行われ、より高度な知識と技術を有する薬剤師の育成に力を注いでおります。
東北大学は世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる研究指向大学として、2017年6月30日に文部科学大臣から、東京大学、京都大学とともに我が国で初の「指定国立大学法人」に指定されました。これは、「研究力」「社会との連携」「国際協働」の三つの領域で国内最高水準にあることが要件とされ、国際的な競争環境の中で、社会や経済の発展に貢献する具体的な研究成果を積極的に発信することが求められています。その中で本研究科は、医療系の研究科と協働して未来型医療の推進のために新しい医薬品開発研究に精力的に取り組んでいます。2019年4月には新しい組織として医薬品開発研究センターを設立し、産学連携および社会連携を推進するとともに、研究教育環境の整備および施設の充実を図っています。本学は国内最大の薬用植物園を敷地内に保有し、次世代の薬用遺伝子資源を収蔵する貴重な教育研究施設として今後その更なる整備が必要とされています。また、本学が位置する北青葉山キャンパスの厚生施設(食堂・売店)と東北大学附属図書館北青葉山分館を一体化して、理学部・理学研究科との緊密な教育研究の共創拠点を形成するべく、2023年の竣工を目指して北青葉山センタースクエア(仮称)を整備しております。
国からの研究教育予算の減少傾向が続く中、上述の理念や社会に期待される人材育成のための教育研究を一層強化するには独自財源の確保が重要であり、社会の皆様から広くご支援をいただく必要があります。このような背景のもと、2020年2月より・薬学部・薬学研究科では「薬学教育研究支援基金」を設立して、幅広く温かいご支援をお願いさせていただいております。この基金設立の趣旨をご理解いただくとともに、是非とも皆様方のご支援を賜りたくお願い申し上げます。お寄せ頂くご支援は学部学生および大学院生の国際的な活動、そして薬学研究科の教育・研究環境の整備充実の資金として活用させて頂きます。皆様におかれましては、「薬学教育研究支援基金」の趣旨をご理解の上、特段のご厚意・ご支援をお願い出来ますと幸甚です。未来に羽ばたく有為なる若手人材の育成のために、なにとぞお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
2023年3月
東北大学大学院薬学研究科長
岩渕 好治