東北大学大学院薬学研究科 東北大学薬学部 | Graduate School of Pharmaceutical Sciences & Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tohoku University

吉田浩子講師が国際放射線防護学会(IRPA)理事に就任いたしました。

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国際放射線防護学会(IRPA)の理事就任にあたって

東北大学 吉田浩子(日本保健物理学会理事)
 
 昨年、5月9日から5日間にわたって国際放射線防護学会(International Radiation Protection Association, IRPA)の第14回国際会議(IRPA14)が南アフリカ共和国ケープタウンで開催されました。国際会議は4年ごとに開催され、その際に任期が終了する理事(Executive Council, EC)の選挙が総会にて行われます。今回のIRPA14では3席をめぐって選挙が行われました。接戦のすえ、日本保健物理学会から推薦され立候補した私がそのうちの1席を得ることができ、理事に就任いたしました。任期は2期これから8年の長丁場になります。本稿では、IRPAの歴史及び組織を紹介するとともに理事選出の様子と就任にあたっての抱負を書かせていただきたく思います。

  IRPAの歴史と組織  
IRPAは放射線防護活動に携わる世界の研究者や技術者の情報交換と技術向上を援助し、人類の福祉のため放射線の医療、科学、工業技術への安全利用を図ることを目的として1965年6月19日に設立され、1966年9月にローマで第1回会議が開かれました。昨年で創立50周年の節目を迎えたことになります。日本保健物理学会は創立当初から加盟しており(1965年12月17日に入会)、最初の理事メンバーには設立に尽力された故西脇安先生が副会長として就任されておられます。創立時の1965年には10の学会が加盟しているのみでしたが、IRPAの活動目的の一つが世界各地域における放射線防護学会の設立促進とネットワーキングであることから年ごとに加盟学会は増え、現在では世界の67ヶ国、52の学会がIRPAファミリーのメンバーとなっています。特に近年、IRPAは発展途上国の学会の設立と加盟に大きな力を注いでおり、2012〜2016年にはキャメロン、ガーナ、ナイジェリア、チュニジアが新しく加わり、ますますIRPAファミリーは大家族になっています。(詳しくはIRPA のWebサイト http://www.irpa.net を御覧ください。)
  IRPAの活動母体はこれらの加盟学会ですが、意見の集約や議論を行い活動の総合管理と運営を担っているのが理事会で、会長を始めとする12人(officer 6人とNon-offficer 6人)で構成されています。理事(Non-offficerの6人)は各加盟学会から推薦された候補者から、国際会議の総会での選挙により選出されるシステムになっています。
 IRPA14で新しく理事に選ばれた3人を含む2016-2020年の新理事会メンバーは下記のとおりです。
会長:Roger Coates (UK), 副会長:Eduardo Gallego (Spain),次期国際会議対応副会長:E Jong Kyung Kim (South Korea),執行理事:Bernard Le Guen (France),会計:Richard Toohey(USA), 出版担当理事:Christopher Clement (Canada),理事: Ana Maria Bomben, (Argentina), Marie-Claire Cantone (Italy),Alfred Hefner (Austria),Klaus Henrichs (Germany),Sigurður Magnússon (Iceland),Hiroko Yoshida (Japan)
 IRPAでは理事会を中心に以下のような様々な委員会、また必要に応じてタスクグループ(TG)やワーキンググループ(WG)を置き活発に活動を行っています。
Commission on Publications
Societies Admission and Development Committee
International Congress Organising Committee
International Congress Programme Committee
Montreal Fund Committee
Radiation Protection Strategy and Practice Committee
Regional Congresses Co-ordinating Committee
Rules Committee
Sievert Award Committee
Task Group on Security of Radioactive Sources
Task Group on Public Understanding of Radiation Risk
Task Group on Eye Dose Limits
Working Group on Radiation Protection Certification and Qualification
  IRPA 設立から2004 年まで、最初の理事メンバーである故西脇安先生、広島でのIRPA10大会長を務められた草間朋子先生、故古賀佑彦先生そして加藤正平先生と日本からは切れ目なく理事が選出されてきました。しかしながら、2004年以降は韓国のJong Kyung Kim氏をアジア・オセアニア放射線防護学会(AOARP)加盟国で推薦し、理事選出に成功したものの、日本からの理事は12年間途絶えておりました。そのようななか、日本保健物理学会からの推薦を受けて私が立候補することになったのです。私は、平成27年7月から日本保健物理学会の執行理事となり企画委員長として活動しており、女性候補を立てるという日本保健物理学会甲斐会長の思惑を踏まえて同理事会で決定されたのでした。

  理事選出の様子
  選挙戦にあたっては、票数が会員数によって決まるため7票しかもっていない日本は、多くの票数をもつ米国などと比べると圧倒的に不利であることが予想されておりました。IRPA14開幕の前日、Associate Society Forumが開催され、そこで新理事候補者8名がプレゼンテーションを行いました。日本保健物理学会甲斐会長とも相談し、”Implementing better practical radiation protection to the strategies for reconstruction and revitalization”として、福島事故以降、避難指示区域の住家内外の調査を行い続けている自身の経験を踏まえて抱負を述べました。家族によってかかえる問題は様々ですが、故郷に帰りたいという年長者がいる一方で若い世代は子供への将来の健康影響の不確実性を心配して帰還しない実状があります。福島事故が提起した様々な課題は放射線防護もまたより良いものへと成長していく必要があることを示しており、これまでの経験を活かしIRPA理事として必ず貢献できると訴えたのでした。11日の総会までの3日間、甲斐会長及び国際対応委員長の服部理事に付き添っていただき選挙運動を行い、選挙に臨みました。選挙権をもった人だけが総会会場に入場を許可され入り口でチェックされると同時に、今回初めて導入された電子投票のためのblackberry端末を1台ずつ手渡されます。3席を8名の候補者で争う選挙は、ラウンドごとに過半数の票を獲得した候補者が理事に選出され、少ない票数の候補者2名が落とされるという方式で行われました。電子投票なので集計結果はすぐにステージのスクリーンに映し出されていきます。第1ラウンドでは過半数の票を獲得した候補者がおらず仕切り直して8名全員で第2ラウンドへ。ここで、まずMarie-Claire Cantone氏が過半数の票を獲得し理事に選出され、同時に下位の2名の名前が消えました。残り5名による次の第3ラウンドではKlaus Henrichs 氏が過半数の票を獲得し、下位の2名がさらに消えました。結局残ったのはアメリカと日本の候補者2名で、第4ラウンドでは両者の一騎打ちになりました。予想外の展開に司会のRenate Czarwinski会長以下会場は興奮で湧き立っておりました。そして、この最終ラウンドで、1票差で過半数をとり日本からの私が理事に選出されたのでした。結果がスクリーンに映し出された瞬間は驚きしかありませんでしたが、会場が大きくどよめいたのは記憶しています。隣席の甲斐会長や日本保健物理学会の代表者の方々の歓声、そしてほかの国の方々から多くの祝福を受ける間に選出された実感が少しずつ湧いてきたのでした。
 理事が入れ替わったのと同時に会長もRenate Czarwinski(独)からRoger Coates(英)に替わりました。IRPA14閉幕後すぐに最初のEC会議がRoger新会長により招集され、前理事からの引き継ぎや直近の仕事の割り振りなどが行われました。私の最初の仕事として、WiN担当をRenate元会長から引き継ぎ、Young Professional networkをAlfred Hefnerとともに担当すること、5th IRPA Asian & Oceanic Congress on Radiation Protection (20-24 May 2018 Melbourne開催) のIRPA側窓口となることなどがこのEC会議で決まりました。本稿を執筆している2015年10月末現在、第2回めのEC会議(Madrid)を翌週に控え、担当用務を報告する準備を行っているところです。

 就任にあたっての抱負
 2012-2016年のIRPA Strategic Programに放射線防護システムにおける様々な国際機関や専門組織(ステークホルダー)の関係を示した図が示されています。(図1)放射線防護の4つの柱であるscience,principles,standards, practiceをリードする役割を担いその機能に責任をもつ機関がそれぞれ明示されており、IRPAはpracticeに重きを置いていることがわかります。同時にこの図は様々な機関や組織とネットワークを密に構築しながら放射線防護の国際的なつながりを構成していくことを意味しています。現場の研究者や技術者の意見及び経験を聴き、組み入れていくことこそがIRPAの強みであり、これがあって初めて様々な機関や組織との共働が活きてきます。これらを踏まえて、放射線防護の進展に批判的な視線をもつこともIRPAの重要な責務であるとされており、福島事故によって提起された問題を解決するために放射線防護のシステムをレビューし改訂することはIRPAの急務の一つとなっています。Associate Society Forumのプレゼンテーションでも述べたのですが、私は環境省の研究調査事業の主任研究者としてこの6年間避難指示区域の住家内外の調査を続けており、現在は主に大熊町と双葉町の帰還困難区域において住家内汚染の調査を行っています。この間、現場の状況をつぶさに見るとともに、調査を通してお会いした100を超える家族からそれぞれの思いを聴いてきました。これらの経験を土台として、IRPAにそして放射線防護に貢献することができると信じています。この時期に日本から選出された意味をしっかりと念頭に置き、積極的な発言を行っていきたいと考えています。同時に、日本保健物理学会を中心に放射線防護に携わる日本の研究者や技術者とIRPAをより密接に繋ぐ役割が大きいことを強く認識しております。IRPA理事としてのチャンネルから入ってくる様々な情報や動向等を日本に伝え、放射線防護活動をさらに活性化し、より良い放射線防護に改善していくためのパイプとしても活動していきたいと考えております。

写真1  Associate Society Forumでの立候補プレゼンテーション
写真2 総会会場での日本保健物理学会代表者選挙前 右端筆者(吉田浩子)隣は甲斐会長。筆者が首にまいているスカーフはSRP(英国放射線防護学会)からのプレゼント
図1 放射線防護の4つの柱と各機関や組織の位置づけ(2012-2016年のIRPA Strategic Programから引用)






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