平成26年度の科研費新学術領域研究として「新生鎖の生物学」が採択されました(平成26-30年度)。
本領域では、リボソームで合成されつつある新生ポリペプチド鎖(新生鎖)を対象とした研究を推進していきます。新生鎖は生命のセントラルドグマにおけるRNAとタンパク質のインターフェースに存在する分子ですが、これまでは翻訳途上の単なる中間体と考えられてきました。しかし、最近になって新生鎖を主役とした生命現象が次々と明らかになってきています。以下に示すように、新生鎖は自らのフォールディングや品質管理を巧妙に制御していますし、新生鎖の状態でのみ生物学的な独自の機能を発揮する場合もあることがわかってきました。
そこで、本領域では新生鎖を主役とした研究を切り拓いてきた研究者を結集し、新生鎖をハブとする細胞機能制御の全貌解明および分子機構の理解をめざすことを目的とします。目的達成のために、従来は別々の分野・コミュニティーで研究がなされてきたRNAとタンパク質の研究を融合しているのも特徴です。また、さらなる発展のためには新しいアイディア・手法・材料が必須ですので、多くの研究者の参画を歓迎します。計画研究に加えて公募研究も含めた多様な研究からブレイクスルーを起こし、生物学における新たなパラダイムの確立をめざします。ご期待ください。(平成26年9月10日)
細胞内のタンパク質はいきなり完成してはたらくわけではなく、mRNAの情報がポリペプチド鎖へと変換される過程で、すべて翻訳途上の新生ポリペプチド鎖(新生鎖)の状態を経過する。新生鎖は何事もなく進む合成の通過点ではなく、リボソームに自ら働きかけることで自身の翻訳速度を制御しつつ、シャペロン群と相互作用しながら正しいフォールディングに向かう。また、タンパク質の品質管理や異常mRNAの品質管理も新生鎖の段階からすでに始まっている。さらに、新生鎖自身が成熟タンパク質とは異なる新規の機能を有する例もわかってきた。このように、新生鎖を主役とした新たなバイオロジーが生まれつつある。本領域は、新たな技術開発も含めながら、新生鎖が関わるさまざまな生命現象の包括的な解明をめざすものである。
本領域では、新生鎖を介した遺伝子発現制御とその生理機能の解明を目的として、タンパク質研究とRNA研究を融合させた研究を推進する。具体的には、新生鎖の生物学という新しい分野を「新生鎖のフォールディング・修飾・局在化」「新生鎖の翻訳速度調節」「新生鎖の品質管理機構」の3つにブレイクダウンし、研究期間内に以下の問いに答えることを目標とする。さらには新世代の新生鎖研究のための方法論にも注力する。
1 | 新生鎖のフォールディング・修飾・局在化 |
---|
2 | 新生鎖のフォールディング・修飾・局在化 |
---|
3 | 新生鎖の品質管理機構 |
---|
新生鎖研究の新しい方法論の開発と応用 |
---|