脳末梢連関を標的とした薬物作用の解析

佐々木 拓哉 教授

 近年、脳腸相関や心脳連関という言葉に代表されるように、末梢臓器が脳の精神機能に様々な影響を及ぼす可能性が示唆されています。逆に、「病は気から」という言葉に代表されるように、脳が末梢臓器を制御していることも自明であります。今後は、こうした全身臓器の連動からなる生理現象が創薬標的の候補となりますが、従来型の各臓器の個別解析だけでは限界があります。本課題に向けて、我々は、1つの動物個体から多数の脳領域活動1)、心拍、全身の筋電位、呼吸、自律神経活動、血糖値、腸収縮などの全身生理活動を網羅的に計測する方法を開発しました2)。この技術により、例えば、心因性不整脈の治療薬が脳の記憶に及ぼす効果や、脳作動薬による免疫関連分子の変動など、個別の臓器を越えた薬物の作用をシステム薬理学的に捉えることに成功しました。本グループは、JST CRESTやムーンショット事業に参画し、同技術が中核的な役割を担いながら、基礎研究から創薬への応用を目指しています。

1) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 118: e2011266118 (2021)
2) J. Physiol. 597: 5295-5306 (2019)

連絡先:佐々木拓哉 takuya.sasaki.b4@tohoku.ac.jp
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~yakuri/index.html