1.陳皮成分ノビレチンの抗アルツハイマー病作用メカニズムの解明研究

 

 アルツハイマー病(AD)は、その発症メカニズムの解明研究により、原因としてアミロイドβペプチド(Aβ)の重合・蓄積による神経変性が考えられています。私たちはADの新しい原因療法薬の開発を目指して探索し、その有望な候補薬物として陳皮に含まれるポリメトキシフラボン、ノビレチンを発見しました。ノビレチンは、血液脳関門を通過し、家族性ADの原因遺伝子を導入した遺伝子改変マウスにおいて記憶障害を改善し、脳内Aβの蓄積を抑制する活性を示します。

 

2.ノビレチンの研究からノビレチン高含有陳皮エキスの抗認知症作用の解明、そして臨床研究へ

 さらに、このノビレチンの薬効を活かした漢方治療薬の開発を目指し、200種類以上の陳皮を探索し、数種のノビレチン高含有陳皮を選別することに成功し、海馬ニューロンの培養系や種々の認知症モデル動物を用いてその抗認知症作用メカニズムの解明を進めています。また、少数例ではありますが、1年間のノビレチン高含有陳皮の服用はAD患者の中核症状を改善して認知機能障害の進行を有意に抑えました。このようなノビレチン高含有陳皮の抗認知症作用は、ノビレチン高含有陳皮によるADの漢方治療に科学的基盤を与えるだけでなく、ADの克服への新たな治療戦略を提唱するものと考えています。現在、本学医学系研究科の関隆志講師と共同で複数の大学病院で臨床研究を推進中です。

 

3.新規アクチン細胞骨格形成促進因子V-1によるドパミンの生合成活性の増強

-パーキンソン病克服へのアプローチ-

 

 V-1はアンキリンリピートタンパク質で、分子内のアンキリンリピートを介してアクチンキャッピングタンパク質CP(CapZ)に結合し、そのアクチンキャッピング活性を阻害するため、アクチン細胞骨格の形成を促進します(PLoS Biol 2010)。また、ドパミン合成に必要なチロシン水酸化酵素などの遺伝子の発現を増大します(JBC 1998; JBC 2002)。
 V-1の遺伝子発現を制御することにより 副腎髄質細胞由来の細胞や培養DAニューロンでのドパミンなどのカテコラミン類の生合成を制御可能であることが最近示されています。
 また、V-1の活性を調節する低分子化合物はカテコラミン合成を制御できる可能性が示されました。新しいコンセプトから生まれるこのような低分子化合物はパーキンソン病の克服への新たな戦略を提示するかもしれません。

※私たちの脳は、アルツハイマー病の原因物質である可溶性Aβオリゴマーから神経細胞を防御するソマトスタチン(SST)-ネプリライシン(NEP)システムを持っています。しかし、脳の老化は、記憶形成に不可欠な海馬のSSTおよびNEP両遺伝子の発現を低下させ、海馬の防御システムの脆弱化を招きます。今回、私たちは、老齢マウスに機能性食品として知られているローヤルゼリーを飲ませると、海馬神経で起こるSSTおよびNEP両遺伝子の発現低下を回復させることを企業と共同で発見し、Journal of Functional Foodsに発表しました(2018年10月)。この発見は食品によるアルツハイマー病の発症予防の可能性を示唆するものであり、さらなる検証を進めています。

※脳疾患の発症原因の研究成果を特許出願しました(2018年3月)

※V-1の細胞生物学的意義についてはNature リビュー誌(Edwards et al. Nature Reviews Molecular Cell Biology. 15:677-689, 2014)で取り上げられました(2014年10月)