未来のパンデミックに備える感染症治療薬の開発

斎藤 芳郎 教授

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)等の新たな感染症“新興感染症”の流行が世界各地で発生し、大きな問題となっています。新型コロナウイルスの増殖には、反応性の高いシステインである“活性システイン”を持つプロテアーゼが必須であり、プロテアーゼ阻害剤を用いた感染症治療薬の開発を目指しています。特に必須微量元素セレン(元素記号Se)に着目しています1)。セレンはウイルスに対する感染防御に重要な元素です。セレンを含む化合物の中から新型コロナウイルスのシステインプロテアーゼMproと共有結合(Se-S結合)を形成し、その活性を阻害する有望な化合物を複数同定しました。現在、in vitroおよびin vivoの感染実験から、新奇セレン含有化合物の抗ウイルス剤としての有用性を評価しています。セレン含有化合物には幅広くシステインプロテアーゼを抑制する作用が見られることから、将来パンデミックが予想される病原体に対する備えとする感染症治療薬開発を実施しています。

文献:
Front Nutr 8: 685517 (2021)

連絡先:斎藤芳郎 yoshiro.saito.a8@tohoku.ac.jp
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~taisya/index.html