膵β細胞を保護する2型糖尿病治療薬・予防法の開発

斎藤 芳郎 教授

 2型糖尿病で見られる膵β細胞の障害を抑制し、その機能を保護する新たな糖尿病治療薬・予防法の開発を目指しています。特に高血糖・高脂肪に伴い肝臓からの分泌が増加する“セレノプロテインP(SeP)”に着目しています。SePは必須微量元素セレン(元素記号Se)を含むタンパク質で、セレンを細胞に運搬する役割を担っています。糖尿病で増加したSePは、膵β細胞からのインスリン分泌を抑制し糖代謝を悪化することから、2型糖尿病の重要な治療標的であることを明らかとしました1)。SePの細胞への取り込みを抑制する中和抗体が膵β細胞保護作用を示すことを発見しました1)。また、SePの発現を抑制するlncRNA L-ISTを発見し、SePを低下する化合物も複数見いだしています2)。現在、東北メディカルメガバンク機構のコホート研究に参画し、SePレベルと疾患リスクとの関連性について調査を行っています。糖尿病モデル動物や培養細胞系を用い、過剰SePによる膵β細胞障害機構や肝臓のSeP発現制御機構を分子レベルで明らかにし、SePを標的とした創薬研究を実施しています。

文献:
1) Nature Commun 8: 1658 (2017)
2) Nuc Acids Res 49: 6893-6907 (2021)

連絡先:斎藤芳郎 yoshiro.saito.a8@tohoku.ac.jp
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~taisya/index.html