活力ある社会を実現するためには人々が安心して健康を享受できる環境が必要です。そのためには、多様な医療ニーズに応えられる新たな医薬品の創製や、早期の社会復帰を支援する低侵襲医療機器の開発など、科学と技術を高度に融合させた医療イノベーションの創出が必須です。これらの医療イノベーションを創出するためには、BIOINTERFACEで生起する生体反応を物理化学的手法により解明し、これにより得られる知見をバイオ工学技術・分子操作技術として一般化することが必要です。また近年ではiPS細胞に代表される機能性幹細胞のように、細胞は医薬品開発における評価ツールとしてだけではなく、それ自身が医薬品素材として有望な要素であると認識されるようになりました。すなわち、機能性幹細胞のバイオ機能発現を調節することができるBIOINTERFACEの創出は新時代の医療を切り拓くための最重要課題として位置づけられます。

 当研究室では高分子化学やコロイド界面科学を基盤学術とし、生体適合性にフォーカスをおいたBIOINTERFACEの創製、および物性・機能評価を通じて生体との相互作用を解明する研究を行っています「創薬科学の学究」。そして、この研究活動を通じて見出した学術的知見を取り入れた分子操作技術の開発に取り組んでいます「創薬技術の創出」、さらにはトランスレーショナルリサーチ、レギュラトリーサイエンス、産学連携・国際連携を通じて医療イノベーションを先導し、人々の健康や日々の営みを支援する医薬品、医療機器、ヘルスケアデバイス、細胞工学・再生医療製品として社会還元し、BIOINTERFACE CHEMISTRYを中心とした「創薬の科学と技術の融合による社会的価値の創出」に取り組みたいと考えています。

 また、教育面においては薬学の基盤学理を体系的に修養した高度医薬人材を育成し、大学院教育を通じて知識の深化と同時に創造や創製といった工学的研究開発能力の涵養を通じて社会に新しい医薬品や診断治療技術を提供できる人材の育成を目指しています。これにより薬学知識に則り、人々の健康を支援する多様な職種や産業で活躍できる人材、創造性に富んだ研究開発を実践できる人材、すなわち「より広く・より深く」創薬化学・分子薬科学に精通した人材を輩出し、新時代の医療の質の向上に貢献したいと考えています。

金野智浩|Tomohiro KONNO, Ph.D.

東北大学 教授 大学院薬学研究科
界面物性化学分野