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生薬名カシュウ(何首烏)
生薬ラテン名Polygoni Multiflori Radix
神農本草経
基原植物タデ科(Polygonaeae)のツルドクダミ(Polygonum multiflorum Thunb.)の塊根を乾燥したもの。
中国では基原植物が異なる「何首烏[=Cynanchum auriculatum Royle (Asclepiadaceae)]」もある。
塊茎を乾燥したものは「生何首烏」で、熱で修治したものを「製何首烏」という。
薬効・適用宋の時代の『開宝本草』に収載され、生何首烏は潤腸、瀉下、消炎作用が主な作用で、製何首烏は肝と腎(肝臓と腎臓ではない)を補益する作用が主である。
強壮・緩下を目的として民間薬的にも利用される。
漢方処方例当帰飲子:太陰病期の虚証で,於血症状と血虚と津液の不足を伴う,特に老人などの「湿疹」、「皮膚掻痒症」、「慢性蕁麻疹」、「尋常性痒疹」に効果がある。
処方内容:当帰、地黄、芍薬、センキュウ、防風、黄耆、荊芥、甘草、シツリシ、何首烏
成分瀉下効果のある生薬(決明子,大黄,アロエなど)に共通する成分のアントラキノン類やスチルベン類を含有する。
最近の研究論文から

1)オーストラリアでツルドクダミの塊茎から製した錠剤(Show-Wu-Pian)の服用によると考えられる急性肝炎の発症例が報告された(Park G.J., et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 16: 115-117, 2001)(see also; But P.P., Vet. Hum. Toxicol. 38: 280-282, 1996)。

2)中医処方(前胡+黄耆)の虚血再還流による心筋障害保護効果は何首烏の添加によりさらに増加する(Yim T.K., et al., Phytother. Res. 14: 195-199, 2000)。

1)の症例報告補足:Parkらの報告(J. Gastroenterol. Hepatol. 16: 115, 2001)によれば、症例対照はオーストラリア在住の中国系女性で「Show-Wu-Pian = 首烏片(何首烏単味からなる)」を滋養強壮の目的で服用していて急性肝炎を発症したという。
彼らは何首烏中のアンスラノイドが肝障害誘発に寄与した可能性を論議したり、また「Show-Wu-Pian」製剤を構成すべき生薬の基準(原植物の同定など)がしっかりとしていないこと。
加えて不純物の混入や重金属類のコンタミ等が肝障害の発症に寄与した可能性も論議している。さらに、臨床医は生薬であっても毒性があることを喚起すべきであるとも述べている。

 「Show-Wu-Pian」がどのような生薬製剤が判然としないので、詳細な論議はできないが、何首烏(生何首烏か製何首烏かも不明)の生薬原末を多量に服用していたのであれば有害事象が発生する可能性があると考えられる(高野)。