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ハナヤスリタケ

学名Cordyceps ophioglossoides (Ehrh.) Fr.
発生地山形県・葉山
採取年月日1989年9月3日
特徴・解説

 菌生冬虫夏草属 Elaphomyces の一種で、ツチダンゴ(土団子)菌に二次的に寄生し、完全世代の子実体をつくるコルジセプス型の菌類である。一般に冬虫夏草属菌は宿主となる昆虫が菌核となり、これに子実体を形成する。対して菌生冬虫夏草の場合は昆虫ではなく、菌核となる地下生菌を栄養源として成長し、地上に子実体を発生させる。
 地下生菌は大概径1~3cm の硬い球状で暗褐色の殻に包まれており、表面には粒状の突起が密布して、内部は菌糸層で充実している。
 子実体は単一で、まれに二本から数本に分岐する場合もある。長さ3~15cm、地下に埋まる菌核の深さにより長さはそれぞれ異にする。菌核の表面から細い菌糸体が伸び、地上部にいたって太くなり、柄として頭部に子嚢の結実部をつくる。
 本種は地下部の二個の菌核から菌糸体がからみ、黄褐色の一本の子実体となったもので、地上部は円柱状で2-8cm×2-7mm 、子実体の頭部は棍棒状、紡垂状で3~10mm, 淡黄褐色から暗オリ-ブ褐色となる。子嚢殻は埋生で卵形、500-600×200-300μで子嚢胞子の大きさは400-500×8-10μである。
 本種はブナの原生林内で発見採取したもので、比較的水はけの良いブナの葉の堆積した腐葉土上に発見、時間をかけて掘り出したものである。地下に掘り下げるほど茎根の部分が細くなり、切断し易くなるので作業に細心の注意を払わなければならなかった。
本種を含め地下生菌はヨ-ロッパや北アメリカの亜寒帯に発生分布が多いので、北方系の菌類と思われる。ニュ-ギニア、マレ-シアにも発見されているが、高山帯の高地での発生で、垂直分布からすると高緯度の分布圏に発生する菌類であると思われる。
人工培養(菌株CY10)