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イリオモテセミタケ

学名Cordyceps pseudolongissima Y.K. et D.S.
中葯分類蝮蝟虫草
採取矢萩信夫
特徴・解説
 世界で350種に及ぶ冬虫夏草属菌類の中で、セミを宿主とする虫草ほど、宿主虫体と子実体が渾然一体となった自然の造形美を醸し出すものは他にない。
 本菌の子実体(stroma)は1個、セミの幼虫の頭部より発し、円柱状で長さが8cm、やや硬い肉質で子実体の頂部は赤褐色の子嚢 殻叢を形成する。柄は虫体方向が皮質で淡褐色を呈し、頂部に向かって捩れを生じる。子嚢殻(perithecium)は半埋生で、子実体から楕円形で粒状の子嚢殻口縁部が突出している。
 本菌は1977年、八重山群島の最南端に位置する西表島の亜熱帯雨林で採取・撮影されたものである。写真は本菌の採取現場での写真で、地下にある宿主のセミの幼虫(セミの種類は不明)を掘り当て、どのような状態で発生するかを撮影したもの。セミの幼虫は土中で空洞をつくり、木の根から養分を摂取する。幼虫は何らかの要因で本菌に感染し、瞬く間のうちに体内組織を全てを消費され、絶命したものと思われる。宿主虫体側では外皮だけが残り、その内部には虫体組織が全く認められず、全ては菌糸体で覆い尽くされていた。また、本菌の不完全世代に分生胞子胞子で世代を繰り返すイリオモテハナセミタケがある。
 なお、虫体の両足からは綿毛状の菌糸体が観察され、それはあたかも虫体からあふれたかの如きであり、本菌の生命力の強さを如実に物語っている。