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コガネムシタンポタケ

学名Cordyceps neovolkiana Y. Kobayashi
発生地山形県最上郡釜淵
採取年月日
特徴・解説

 本菌は鞘翅目(Coleptera)のコガネムシ科(Scarabaeidae)コガネムシ類の幼虫に寄生するノムシタケで、甲虫類に寄生する代表的な冬虫夏草属菌である。鞘翅目の昆虫に寄生する菌類は鱗翅目に発生する虫寄生菌以上に、実に幅広い世帯を形成するとされる。本菌は朽木に巣くうコガネムシの幼虫からから発生していたもので、幼虫の背部、頭頂部および尾部から、図のような橙黄色の子実体を形成する。コガネムシの生息環境に応じて、地面より発生する場合もある。
 朽木は直径が1 m以上にも及ぶ風倒木で、ブナをはじめとする広葉樹のものに発生例がある。
 寄生宿主となる昆虫が減らずとも、これらに特異的に寄生する虫草菌の発生例が、初見以降ないものを仮に「幻の虫草菌」とすれば、コガネムシタンポタケも「幻の虫草菌」である。この理由の一つとして、戦後から今日に至るまで原生林の伐採や人工的な植林が劇的に進行したことによる。森林伐採や植樹による原始生態系(いわゆる太古からの自然形態をとどめた自然)の破壊は土壌細菌の生態系をも大きく変えるためであると考えられている。虫草菌もまた絶滅に瀕した絶滅危惧種の菌であるのかも知れない。
 本種の子実体は寄生宿主の幼虫から単一または2~5本発生し、頭部に橙黄色で球形をした子嚢果を作り、総じてタンポ状の子実体を形成する。柄も子嚢果と同じ橙黄色で柔らかく肉質であるが、虫体付近の基部は白色を呈する。子実体の高さはおおよそ1~2 cmに達する。子嚢殻は完全埋生型で、粒状に無数に分布する。単一の子嚢殻は卵形ないし楕円形を呈する。