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クモタケ

学名Isaria atypicola Yasuda
発生地山形県
採取年月日
特徴・解説

 本菌は節足動物でクモ目(Araneina)のクモから発生するクモ寄生菌である。節足動物のクモに寄生する菌類では最も代表的な不完全世代型のイザリア型寄生菌である。
 本種はクモのなかでもトタテグモから発生したもので、土中あるいは地表より発する。不完全世代型の虫草菌独特の形態である分生胞子(conidium)が無数に分布する。
 本菌とは別に、不完全世代型のクモタケとしてスティルベラ科のギルベルラ(Gilbellula aranearum (Sch.) H. Sydow)が普遍種として報告されている。また、完全型かあるいは別種と考えられるトルビエラ型のクモ寄生菌として、サンゴクモタケやトルビエラクモタケがある。なお土中から発生する不完全世代型のものは本菌のみである。
 本菌は体長が 1 cmほどのトタテグモから発生しており、子実体は棍棒状で大きさは8.5 x 0.4 cm、弾力性のある肉質の柄をもち、地上部は図のような暗紫色の子実体である。完熟が進むと分生胞子が風に乗って飛散する。分生胞子の形態は楕円形で3.3 x 0.9μmであった。
 冬虫夏草属菌の定義に照らせば、本菌の寄生宿主は昆虫ではないので厳密には冬虫夏草属菌に分類されるのはおかしいと考えられるが、子実体や菌そのものの形態が分生子束 synnema 固有の形態を示すことから冬虫夏草属菌に含めるのが妥当である。