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ミジンイモムシタケ

学名Cordyceps sp. Kobayashi
中葯分類鱗蛹虫草類
採取矢萩信夫
特徴・解説

  鱗翅目(Lepidoptera)のヤママユガ科(Saturnaiidae)の幼虫に寄生する、最も優美で大型の虫草菌である。鱗翅目虫草には中国の「冬虫夏草」(C. sinensis Sacc.)をはじめ、数多くの種類が存在することが知られており、本菌は本邦最大の蛾の幼虫であるヤママユガ(Antheraea yamamai)の幼虫に寄生する。大型の鱗翅目虫草には「トサカイモムシタケ」があるが、本菌よりも一回り小さく、子実体の色合いも朱色から暗朱色を呈する。本種は菌学会において未登録のものであるが、菌類学の泰斗である小林義雄博士(故人)により標本番号化(TY-262)されている。宿主虫体の体長は1.2 x 7cmになる。子実体は棍棒状で時に不規則な扁平型となり、結実部の表面には子嚢果(ascoma)が密に分布し、柄は白色、後に淡黄色、捩れて発し、肉質である。子実体は大小3~16本の叢生で、高さは実に11 cmにもおよぶ。子嚢殻は細かく、裸生型で頭部の子嚢面に粒状に分布し、図2のような卵形か楕円形を呈する。
 本菌は1988年、山形県の羽黒山にて発見採取したもので、子嚢殻(perithecium)の朱色が際だち、その美麗さに驚嘆した。本菌は地生型で、子実体は寄生虫体の頸部、背部、あるいは尾部より発する。発見地の植物相はタニウツギ、オオカメノキ、クヌギ、コナラ、クリ、カシワ、ヌルデ、ツバキ、マツ、ホウノキが生育し、この樹相を囲んで樹齢30年を越す杉が並んでいた。
 図2に示したように、子嚢殻から方形で糸状の胞子が無数に飛散する状態が観察された。子実体から分離した子嚢殻は極めて吸湿性が高く、吸湿すると瞬時のうちに胞子の飛散が起こる。そのため、胞子果は無水エタノール・グルタルアルデヒドなどを用いて固定後、種々の染色操作を行い観察する。