同翅亜目 Homoptera.のセミ科 Cicadiae の幼虫に感染したセミ寄生菌で、本種は大形のエゾセミ Tibicen japonicus Kato の幼虫に寄生した冬虫夏草属菌である。子実体 stromaの長さ19.2cm、地上部6cm、頭部の大きさ縦 11mm、横 7.0mm、柄の太さ 4.0mm 、基部は細くなり 1.2 mm になる。 セミに寄生する代表的な子嚢菌類の一種にセミタケ Cordyceps sobolifera (Hill.) B.et Br. があり、古来、中国では蝉茸として珍重され、小児のひきつけ、夜泣き、咳嗽、痙攣、湿疹を癒すのに用いられてきた。形態的に、子実体は棍棒状で大きさも約2分1に満たない。関西を中心に発生し、栃木県以北では未だ記録されていない。また、東北を中心に発生するオオセミタケ Cordyceps heteropoda Kobayasi は形態的にもタンポ状、頭部の色は淡紅褐色で、柄は淡色、本種と色合を異にする。 本種の子実体の地上部はニ双生。白色、肉質で弾力性があり、地下部は徐々に細まり茶褐色に変わる。 子嚢殻 perithecium は完埋生で淡褐色、孔口は細口瓶形で、タンポ状頭部の表面に粒点状に密布する。大きさ 580-650×280-320μ。 子嚢 ascis の大きさ125×3-5μ、頭部は3×3μで二次胞子は冊状形、大きさは5.0-7.5×2μになる。 人工培養(菌株 C-Y 105). 夕日に染まる十和田湖畔の広葉樹林帯で発見したもので、2例目は未だ見付かっていない。例年、同じ近辺を探索しているが、近年、林道が切り開かれて、自然環境の生態系が破壊され、種の絶滅に帰したものと思われる。 |