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トサカイモムシタケ

学名Cordyceps martilis Spegazzini
中葯分類鱗蛹虫草
採取矢萩信夫
特徴・解説

 鱗翅目(Lepidoptera)の蛾の幼虫に寄生し蛹の段階で発生する虫寄生菌で、虫体の胸部、口唇部、腹部などから子実体を発する。
 本菌は子実体が3本、宿主から伸長し、偏圧した棍棒状を呈し、子実体表面には黄褐色の子嚢殻が密に分布する。子実体はその全体が淡朱色で、弾力性のある肉質である。本菌は、1978年8月に山形県内の月山山系にある自然林の中で採取・撮影したものである。
図のように蛾(種類は不明)は羽化する寸前で、本菌によって絶命した状態を捉えることのできた大変貴重な写真である。この写真は、虫草菌が死んだ昆虫ではなく、生きた昆虫に寄生して世代を繰り返す「活物寄生菌」であることを如実に示している。採取したイモムシは硬くて弾力性があり、内部は全て白色の菌糸体で覆われ、菌核を形成していた。なお、子嚢菌で植物に寄生し、菌核を形成する代表的なものにライ麦に感染するバッカクキンが知られ、ノムシタケ属では本菌以外に多くの虫寄生の子嚢菌類が発見されている。 文責:矢萩信夫