タバコの煙、自動車の排気ガス、焦げた食物などにはガンを起こす化合物が含まれています。
ヒトは日々これらの外来異物に暴露されておりこれが発ガンの原因となっています。また病気の
時に服用する薬も、場合によっては体に障害を起こすことがあります。ところがこれらの化合物
はそのままの形では、ほとんど作用を起こさないのですが、場合によっては、生体内に存在する
薬物代謝酵素により毒性を持つ化合物に変換されます(代謝的活性化)。代謝的活性化された化
合物は、生体内のDNAやタンパク質と反応することで分子に傷をつけることができるようにな
ります。この分子の傷がたまるとガンや多くの病気になると考えられています。また生体はこれ
を防ぐために代謝的活性化された化合物を解毒する代謝酵素や組織からこれらの化合物を排出す
るトランスポーターを持っています。
 そこで我々は、化学物質によりガンや肝臓の障害などがおこる機構、あるいは防御する機構に
おける生体内での薬物代謝酵素やトランスポーターの役割を明らかにするため、薬物代謝酵素や
トランスポーター等の発現をコントロールしている受容体の欠損したマウスや薬物代謝酵素欠損
マウスを使用しています。これらのマウスを用いることで、外来異物や薬物の体内での代謝や動
態とガンや肝臓の障害等との関係について研究しています。