MB&M 代謝制御薬学分野 東北大学大学院薬学研究科 生命薬学専攻

分野紹介

研究室の機器類

1.ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)

ICP-MSとは、複数の元素を同時に分析する装置です。プラズマ(ICP)をイオン源として使用し、発生したイオンを質量分析部(MS)で検出します。周期表上のほとんどすべての元素を同時に測定可能です。

2.マイクロ波試料前処理装置

生体試料を硝酸などで酸消化する際に用います。高温下でマイクロ波を照射することで、効率よく試料の消化を行います。消化後、ICP−MSでの元素分析に用います。

3.遠心機(左)とプレートリーダー(右)

生体試料や細胞の遠心に用いる遠心機です(左側)。プレートリーダーは、96ウエルプレートの各ウエルの吸光度を測定する機器です。細胞の生存率や酵素反応の解析に用いています。

4.蛍光顕微鏡

細胞を観察する際の顕微鏡です。蛍光標識することで、細胞内小器官の変化も観察可能です。

5.クリーンベンチ

細胞を培養し、刺激するときに使用します。無菌状態で細胞を培養します。

6.セミナー室

微量元素・活性種の代謝を分子レベルで理解し、その制御方法を創薬に活かす

私たちの体は、数多くの元素から構成されています。その中には全体の1%にも満たない微量元素が存在し、全身の恒常性維持に重要な役割を果たしています。代謝制御薬学分野では、生体における微量元素の役割に着目し、その生理的役割、特に反応性の高い活性酸素や有害物質に対する防御作用について分子レベルでの研究を行っています。これまでの研究から、微量元素の代謝異常が、糖尿病やがん、神経変性疾患に関わることが明らかとなってきました。私たちは、微量元素の研究から、その制御方法を開発し、創薬へとつなげる取り組みを行っています。

研究手法として、生化学・分子生物学的手法を基軸とし、ノックアウトマウスなどの遺伝子改変動物やモデル細胞を用いた研究を行っています。近年進歩の著しい網羅的解析手法も取り入れ、疾患バイオマーカーの同定から治療法開発につなげる研究を行っています。高度な研究技術を持ち、世界で活躍できる研究者の育成を目指しています。

図の解説:
呼吸によるエネルギー産生の課程で消費する酸素の内、その数%は反応性の高い“活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS)”になることが知られています。ROSは、生体分子を酸化・変性するため、その存在は危険です。私たちの体には、ROSを除去する抗酸化システムが存在しており、ROSの生成と抗酸化システムによる除去がバランスをとった形で存在しています。一方近年、ROSが細胞応答に重要なシグナル分子として機能することも明らかとなり、ROSが少なすぎることも生体に悪影響を及ぼすと考えられています。ROSが多すぎる、あるいは少なすぎることによるバランスの崩れは、細胞死や炎症だけでなく、エネルギー代謝や細胞増殖、転写調節など多様な影響を及ぼすことが分かってきました。代謝制御薬学分野では、生体内におけるこのバランスの重要性について分子レベルでの理解を進めるとともに、バランスを崩す因子として、重金属や毒物、栄養不全に着目した研究を行っています。