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井上飛鳥教授らの研究グループは、温度・化学刺激を感知するタンパク質の測定技術を開発しました。

【発表のポイント】

  • 細胞膜に存在する温度・化学刺激センサーのTRPチャネルが活性化されると、細胞内のシグナル伝達を通じて膜貫通タンパク質TGFα(注1)の細胞外ドメインが切断される現象を見出しました。
  • この現象を利用して、TRPチャネルに作用する化合物の効力を簡便に測定する手法を確立しました。
  • 本手法を活用することで、TRPチャネルを標的とした創薬に貢献することが期待されます。

【概要】
TRPチャネルは、細胞膜に存在するイオンチャネルであり、温度や機械刺激、化学物質の刺激により活性化型へと構造変化します。これにより細胞膜を貫通する穴(チャネル)が開いて、カルシウムイオンなどの陽イオンが細胞内へと流入し、様々な細胞応答が生じます。TRPチャネルは、多くの組織に分布しますが、特に神経細胞に高発現しており、痛みや温度の知覚に関与するほか、神経変性疾患や精神疾患などにも関連しています。そのため、TRPチャネルを標的とした創薬研究は、疾患治療に有効である可能性があり、TRPチャネルの活性化を検出するための簡便な手法が求められています。
東北大学大学院薬学研究科の辰己茉菜絵大学院生、井上飛鳥教授らのグループは、培養細胞を用いた実験により、TRPチャネルが化合物刺激を受けると、膜貫通タンパク質であるTGFαが切断されて細胞外へ放出されることを発見しました。この現象を利用して、TRPチャネルを活性化する化合物の効力をTGFαの切断量を指標に、呈色反応として簡便に評価する手法を開発しました。従来の評価法は、高価で専門性の高い測定機器が必要でしたが、今回開発した手法は、様々な研究分野で広く利用される吸光プレートリーダーがあれば計測でき、呈色試薬も安価であることから、多くの研究者が手軽に実験可能な技術となります。
本研究成果は、2023年1月20日(現地時間)にPLoS ONE誌にオンライン掲載されました。 

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
電話 022-795-6861
E-mail iaska@tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 総務係
電話 022-795-6801
E-mail ph-som@grp.tohoku.ac.jp