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土井隆行教授らの研究グループは、マクロライド生合成の立体配置を司る鍵酵素の解析をしました。

【発表のポイント】

  • マクロライドは抗生物質(注1)として利用される化合物の一群です。
  • ピクロマイシン(注2)はマクロライドの一種であり、その生合成(注3)に寄与する酵素反応は、新しいマクロライドを設計するためのモデルとして世界中で研究されてきました。
  • 独自に化学合成した基質を用いることで、これまで不明であったメチル基及びヒドロキシ基の向きを制御する鍵酵素が、どのような向きでそれら官能基を合成するのかを実験的に明らかにしました。
  • 今回の発見により、生物工学的手法による新規なマクロライドを設計・生産するための重要な基礎の一端を確立しました 。

【概要】

 マクロライド系抗生物質はポリケタイドの一種であり、その生物活性は付与される官能基の空間的な向き(立体配置)に強く依存します。本研究では、マクロライドのバイオものづくりにおけるモデル化合物であるピクロマイシンの生合成において、官能基の向きを制御する鍵酵素「ケト還元酵素(KRドメイン)」の機能を解明しました。独自に合成した基質を用いた実験により、これまで不明であったKRドメインの産物について、その立体配置を特定することに成功しました。
この成果は、KRドメインのアミノ酸配列から、産物の立体配置の予測精度を高め、酵素の合理的な設計を可能にする一助となるものです。将来的に、天然には存在しない革新的な医薬品分子を創出する、次世代の物質生産への応用が期待されます。
本研究成果は、2025 年 12 月 17 日付で英国王立化学会誌 Chemical Scienceに掲載されました。

【用語説明】

注1)抗生物質/マクロライド
抗生物質とは、病原微生物に対して殺菌、あるいは発育抑制作用(静菌作用)を持つ化合物のうち微生物が産生する化合物の総称。マクロライドは抗生物質の一種であり、14あるいは16員環の巨大な環構造に糖が結合した構造をした抗生物質の総称。細菌などのリボソーム50Sサブユニットと呼ばれるタンパク質の合成装置と結合してタンパク質合成を抑制することにより、静菌作用を示す。

注2)ピクロマイシン
1950年にドイツの科学者(Hans Brockmann、Willfried Henkel)らによって、細菌の一種である放線菌より発見された最初のマクロライド系抗生物質。

注3)生合成
生体もしくは細胞が化学反応により物質を作り出す現象。

ピクロマイシン生合成経路概略図

【問い合わせ先】

東北大学大学院薬学研究科 反応制御化学分野
教授 土井 隆行(どい たかゆき)
E-mail takayuki.doi.b5@tohoku.ac.jp