先輩からのメッセージ

大学研究者の先輩からのメッセージから

立川正憲

2005年3月学位(博士(薬学))取得 

現職:富山大学大学院医学薬学研究部薬剤学研究室

(2007年11月16日投稿)

薬物送達学分野(送達)を卒業して、約3年の月日が過ぎようとしています。あの時代を振り返り、現在も同じ大学という場にはおりますが、置かれている立場も環境も変わり、今になって身にしみて感じることも多々あります。以下は、今後の自分への戒めも込めて、今送達で研究を続けている方へ、または研究を始めようとしている方へ、何か伝わるものがあればと、思いのままに書きました。

今になって言えること

大学で研究を進めていると、必ずといっていいほど、私自身が送達時代経験したのと同じような問題を抱えて、学生さんがやって来ます。その時、当時寺崎教授に指導していただいた解決方法と同じことを、逆に私が言っていることに、ふと気づくことがあります。当時は、なぜそんな無理難題を言いつけるのかとよく反発したものですが、今考えれば、実はそれが最善の方法であったことを認識させられる瞬間です。最近、私が感じるのは、薬物送達学分野(送達)の研究室に配属以降、大学院博士課程修了までに、”研究(実験)に打ち込んで”、見たり聞いたり、批判されたり、人に出会ったり、経験したりしたことが、知らず知らずのうちに自らの血となり肉となり、現在の自分のキャリアーの直接的な土台になっているということです。従って、大学院の時期に、 (1)いかに充実した環境で、(2)自分の能力の限界まで、時には限界を超えて仕事をして、研究スキルをできる限り高め、いかに土台を固めておくかが、とても重要な気がしてなりません。さらに、私が送達に在籍した6年の間、送達を巣立ち、製薬企業・国外の大学・医療機関において幅広く活躍する先輩・後輩・同級生、さらに共同研究で御指導いただいた先生方との出会いは、今となって、私の大きな財産となっていることは特筆すべきことです。

3年生で、研究室選びで迷っている人へ

研究内容に対して、興味を持つか持たないかで研究室を決めるのは、もちろん重要なことです。しかしこれにとどまらず、前述したように自分の能力の限界を知り、時には限界を超えて仕事をして、研究スキルをできる限り高められる環境に自分をおくことができるかどうか、を見極めるのも、もっと重要なことだと思います。私の場合、当時はこんなことは少しも考えていませんでしたが、寺崎先生が研究室の説明会で、熱く語っていたことが印象に残り、どうせ研究するならと覚悟をして、送達の研究室に決めたと思います。寺崎先生の話をお聞きしたとき、送達ではそんな大きなことが実現できるのだと思ったのですが、実際は誰かが与えてくれるものでもなく、自分達の努力次第でその実現の可否が決まってしまう責任をも負わされることを、心に留めておくべきことも学びました。以下の5点は、今振り返って、私が個人的に送達の研究室を選択してよかったと感じている点です。これは、大学院博士課程在学時、国内一流の解剖学の研究室で研究をさせていただく機会を与えていただいた際にも、その研究室に同様の印象を持った記憶があります。先生方のキャラクターは異なっても、研究に打ち込むのに優れた環境というのは共通点があるということです。

1.学生が互いに(時にはスタッフも含めて)、切磋琢磨できる環境にあったこと

研究の話をするときはもちろん、それ以外のどうでもいい話をする時も、つい真剣勝負で議論をしていた気がします。そういうことが普通にできる環境でした。さらに、日々の生活についても、実験の進め方についても、実験結果の解釈についても、いろいろとむしろ批判的な意見をもらえたことは、今になって相当プラスになっています。

2.親父の背中ならぬ、研究者の背中を見せてくれる人(先輩、スタッフ)に出会えたこと

3.常に次、次を見据えたビジョンが示されており、その実現に向けた緻密な研究プログラムが考えられていたこと

4.研究スタッフに、確固たるフィロソフィー(哲学)が感じられたこと

5.研究設備などのハード面が充実していたこと

一人でも多くのやる気のある学生の皆さんが、送達で研究を開始する一助になれば幸いです。

4年生になって、大学院への進学を迷っている人へ
大学院で研究を続けている人へ

大学や企業において研究を主とする職業に就くか否かにかかわらず、将来”自立した”研究者又は薬剤師を目指すなら、大学院博士課程(後期課程)への進学、博士(PhD)の学位取得は必須だと思います。しかしそれは、単に学位という名の肩書きをもらうためではありません。今後益々、私たちは、過酷で、激動する競争社会の中に置かれることは明らかです。大学でも個人業績評価制度が本格的に導入され、それらが個人給与に反映される時代になりました。この社会情勢に立ち向かう為には、本当の意味で”自立した”研究者となることが必要であり、それは誰にも負けない、常に誰かに認められるエキスパートになることを意味していると思います。そのために、大学院で何を身につけるべきか。専門的な知識を詰め込み、実験の方法を学んで、研究成果を出すことは、もちろん重要ですが、それはほんの一部分に過ぎないと思います。知識や実験の方法などは、仕事が変わったらそのままではすぐに使えなくなってしまうでしょう。そこで、大学院の期間は、誰にも負けない、常に誰かに認められるエキスパートになるために、

1.誰にも負けない、誰かに認められる企画提案力、計画実行力を身につける

2.誰にも負けない、誰かに認められるプレゼンテーションスキルを身につける

3.誰にも負けない、誰かに認められるコミュニケーションスキルを身につける

4.確固たるフィロソフィー(哲学)を持つ、時には、柔軟性を持つ

ための”最もハードな”トレーニング期間と位置づけるべきと思います。確固たる信念を持ちつつ、いかに説得力のある提案ができるか、企画書を作るか、その後計画を立てて実行できるか、他の人と協調するか、はこの社会を研究者として、又は薬剤師として、生き残っていくために不可欠なスキルであると思うからです。このトレーニングの期間を、2年にするか、5年にするかが問題なわけですが、やはり2年間では少し短いかもしれません。但し、進学を決意するのに、研究に向いているからとか、向いていないからとか、又は研究がうまく進んでいるから、いないからとかいう基準は、あまり重要ではない気がします。実際、世の中の一流若手研究者を見ていると、私自身研究に向いているとは今でも到底思えませんので。一方で、先を見通して、自発的に考え、積極的に提案し、努力し続ければ、チャンスはいつか訪れると信じています。

当時、研究の提案次第では、研究を存分に発展させていける環境を与えていただいたこともあり、いかにして自分の提案を教授に受け入れてもらえるように説明するか、は先輩を巻き込んで、最も頭を悩ませたことでした。さらに、リサーチプロポーザルセミナーでのプレゼンテーションを始めとして、研究計画書や報告書の作成及び、何度も奨学金等の申請書や商業誌へのレビューを書く訓練をする機会をいただけたことは、今の自分にとって確固たる土台になっています。また、学生には、学会などの講演の際に日本を訪れた外国からのビジターを前に、英語でプレゼンテーションする機会も与えられました。先日、実際に海外のとある大学で、私たちの研究成果をプレゼンテーションする機会に恵まれました。未だに自分の英語力の無さに大恥をかきつつも、あの時指導していただいたプレゼンテーションスキルは、海外のラボでも十分に通用することを実感させられています。うれしいことに、聴講に来てくれたMDやPhDの研究者は、私たちの研究にとても興味を示してくれ、いろいろとディスカッションさせていただくこともできましたが、この人たちと対等に付き合っていく為には、やはり学位の取得は最低条件であることも身にしみて感じました。同時に、数年間は海外のラボにおいて、研究の視野を広げる必要性も痛感してきました。

これらは今だからこそ言えることであって、M1に進学した当初は何も考えていなかったというのが正直なところですし、もちろん大学院に5年間も残るとは、考えもしませんでした。その後、M2に進級した段階で、既に優秀な博士後期課程の先輩が6名おり、いろいろと苦労の中にも研究の面白みが少しずつ感じられたところでしたので、ここまで来たら、納得行くまでとことんやってみようと思い、博士後期課程への進学を決断しました。この決断は、事後報告であったにもかかわらず、惜しみなく援助してくれた両親にはとても、感謝しています。結果的に、送達での研究生活から学んだことは、自立した研究者又は薬剤師を目指す以上、一生の糧(バイブル)になり得ると私は思います。

しかし、時には自分の能力を超えて120%を要求される研究室ですから、在籍中は常に”できる(た)”と自分を満足させる時間はないかもしれません。また、実際にあれほどまでに自分の力の限界を実感した時間もありませんでした。しかしながら、大学院を修了、学位を取得し、新たな環境に自分を置いたあかつきには、何かが大きな財産となって自分に残っていることにきっと気付くと思います。これは、送達を巣立った卒業生の多くが認めることです。本当の意味で”自立した”研究者になるために、ぜひ自信を持って、薬物送達学分野の門を叩き、未開拓の研究にチャレンジして行っていただきたいと思います。これから送達PhD門下生が、国内だけでなく、世界に向けてさらに大きな力になって、社会に貢献できることを心から望んでおります。

企業研究者の先輩からのメッセージ

手塚 和宏

2003年3月学位(博士(薬学))取得

現職:アステラス製薬株式会社

(2008年2月12日投稿)

はじめに

 大学の研究室選びや博士課程への進学について迷っている皆さんに初めにお伝えしたいことは、「自己責任」と「研究活動で得た経験や、学位を活かしていくにはその後も努力が必要である(卒業や学位の取得はゴールではない)」ということです。これは進路についてどのような選択をしてもついて回るものだと思います。
  下には私が経験したり感じたりしたことを書いていきます。学生時代には気付かなかったことがほとんどで、それを皆さんが読まれたとしても、ピンと来ないものもあるかもしれませんが、少しでも参考になれば幸いです。

研究室選びを迷っている3年生へ

 4年生になったら研究室に配属されて1年間研究を行うわけですが、「どの研究室がよいのか分からない」「自分は何に興味があるのか分からない」と思われる方がほとんどだと思います。1つ言えるのは、4年生の研究期間は、その後社会人になったり、研究を続けたりしていく上でとても大事な期間だということです。研究室では、自分で考えたり、もしくは先生から指示を受けたりして行動し、結果をまとめて、報告をします。そしてその報告を元に、また指示を受けたり、自分で考えたりして、次の行動(実験)に繋げていきます。これは研究者であるかどうかには関係なく、その後社会人として生活をしていく上で必要なことだと思います。そして、この1年間で学んでいくうちに、知らないうちに自分の中での行動基準ができていくと思います。良い環境で生活が出来れば、自分の知らない内に、高いレベルでの基本が身に付くと思います。薬物送達では、スタッフから指導を受ける機会も多く、自分で考えられる環境も揃っていると思います。

学位を取得する上で必要なことは?(博士課程への進学を迷っている皆さんへ)

 就職するか?博士課程に進学するか?

 これは多くの皆さんが悩み、迷うことだと思います。修士課程に進学して半年か1年で次の進路の選択をしなければならない、というのは、本当に難しいですよね。「自分は学位を取れるだろうか?」「3年間研究活動を続けられるだろうか?」・・・いろいろ悩まれることと思います。ですが冒頭に書いたとおり、どの進路を選択したとしても、その後の努力はずっと必要です。それならば、研究に集中できる環境で腕を磨くことを選択肢に加えてみてはどうでしょうか。幸いなことに薬物送達では研究体制が整っており、自分を鍛え、研究に没頭するには本当によい環境だと思います。

個人的には、学位を取る上で一番重要なことは「進学する」という決断を下すことだと思っています。この決断ができれば、学位を取得する難しさの半分くらいはクリアしているのではないでしょうか。そして残りの半分は、興味を持って研究をすることと、途中で投げ出さずに最後までやりぬくことだと思います。

20代で何をするか?

 私は学位を取得することができましたが、その一方で、「もし進学せずに他の進路を選択したらどんな人生を送っただろう?」「青春の!? 20代の半ばを研究中心で過ごしてよかったのだろうか?」などと考えることがありました。こんな悩みをある人にぶつけたところ、帰ってきた言葉は、「1つの物事に集中して取り組むのは、誰でもできることではない、それを若いうちに経験できるのは本当に幸せで、この経験は人生に絶対に役に立つ」というものでした。私はこの言葉を聞いたときに、博士課程に進学して本当によかったと思いました。本来ならば、自分の将来を常に見据えて、「10年間で何をするか」ということを考えながら生きていくのがよいのかもしれません。ただ、薬物送達に所属して研究してきたことで、後で振り返ったときに、「自分はコレをやってきた」という自信をもてたことが大きかったです。

さいごに

 大学で研究を続けていると、楽しいことだけではなくて、辛いことや大変なことに遭遇することもあると思います。そんな時に頼りになるのは、やはり友達、親など、自分の身近にいる人だと思います。研究が忙しくても、同じ研究室の仲間、昔からの友人などとの交流は大事にして下さい。そして、研究は1人で出来るものではありません。先生や先輩との議論を大切にして欲しいと思います。そして最後の最後に頼りになるのは、自分自身の決断です。いろいろな方とお話をして、そして自分で考えて、是非良い学生生活を送って下さい。

 

近藤 徹

2004年3月学位(博士(薬学))取得

現職:小野薬品工業株式会社 研究本部 薬物動態研究所

(2007年10月29日投稿)

・大学院に進学するか否かの判断

 将来的に何らかの研究職に就きたいと思うのであれば、大学院修士課程に進学することは必須であると思います。この後、多くの学生が悩むことは「大学院博士課程(後期課程)に進学するか否か」ということです。私が研究室に配属された学部4年生の時、大学院博士課程に進学するか悩んでいました。このことを先輩に相談したところ、「進学するか迷っているのであれば、進学して学位(博士)を取得した方がいい」という一言が返ってきました。自分としても大学で研究に打ち込んだ証として「学位を取得したい」という思いもありましたし、その当時から寺崎研究室では最新の機材が揃っており、学生は自分のアイデア次第で研究をいくらでも発展させてもらえる機会を与えられていたことから、私は博士課程まで進学することを決めました。他の研究施設と比較して、研究環境がこれほど整っている研究室も珍しいことから、この環境を利用して研究に没頭するのも良いかもしれません。自分で考え、それを共同研究者に説明してコンセンサスを得て、実行して結果を残す。自立した研究者に必須な要素を身に付けるためにも、寺崎研究室で大学院博士課程まで進学することは非常に意味のあることだと思います.ただし、中途半端な気持ちで博士課程に進学しても時間の無駄です。当然、博士課程に進学した時点で学位取得という最低限の義務が設定されますし、後輩の指導的立場におかれます。業績のみならず研究に対する姿勢・熱意という点から、研究室全体に良い影響を及ぼす役割を担います。優秀な先輩がいれば、自ずと後輩も博士課程に進学し、研究室が発展していくというわけです。

・就職してから感じたこと

 製薬企業に就職して感じたことは、必ずしも企業の研究員に学位(博士)は必要ないということです。それどころか「修士卒で就職した方が良かったかな?」と思うこともあります。ただし、今後は状況が変わるでしょう。まず、ご存じの通り、世界的に新薬が承認されにくい状況にあり、製薬企業は他の企業から化合物を導入することで、何とか開発化合物の数を増やそうとしています。交渉先の多くは外資系の製薬企業やベンチャー企業であり、その化合物を導入する価値があるか判断したり交渉の場に臨席したりする人の多くは学位取得者です。学位の有無で仕事内容が変わってくる時代もそう遠くないと思います。また最近、社員を大学に派遣して学位を取得させようとする企業が少なくなってきています。わざわざ会社がお金を払って社員に学位を取得させるなら、学位を取得した学生を採用する方が会社の負担にならないからです。この傾向は益々強くなっていくでしょう。運良く学位を取得させてくれる会社に入れたとしても、その機会に自分が巡り会えるか分かりません。そういう意味でも「大学院博士課程に進学するか迷っているのであれば、進学して学位を取得した方がいい」ということになります。もう一つ思うことは「学位を取得した後に海外留学して研究経験を積んでおいた方が良かったかな?」ということです。数年間の留学を経てからアカデミックに残るか、それとも企業研究員になるか決めても遅くないような気がします。近頃は研究員を中途採用している企業もありますし、海外留学経験があれば他の中途採用希望者と比較して有利なはずです。

・在籍する学生さんへ

 どこで働くにしても「この研究に関してはこの人」と思われるような「武器」を持つことが重要だと思います。「武器」を持つことによって、自分の存在価値というものを見出すことが出来るでしょうし、周りからの評価も得られるはずです。ただし、そのためにはある程度の努力も必要です。まずは今やっている研究テーマを一生懸命取り組み、そこから何らかの「武器」を見つけるのも良いのではないでしょうか。あと、私が勝手に思っている理想的研究員像とは「貪欲に自己実現のために努力できる人」です。ただし、独り善がりでは決して仕事は成立しませんから、協調性を兼ね備えていることも重要です。自分の考えをしっかりと持ち、議論の中から最適な研究方針を決定して実行することで良い結果を残せるのだと思います。研究の場(基礎・創薬・臨床など)は色々ありますので、自分に適した仕事を見つけ出し、お互いに社会に貢献できればいいですね。

菅原 道子

1998年3月 修士(薬学)取得

現職:エーザイ株式会社 筑波研究所 

(2007年12月1日投稿)

私は、寺崎研での2年間の大学院研究を経て、製薬会社の研究所に勤務しています。卒業してから10年近くがあっという間に過ぎましたが、会社の仕事でも多くの経験をさせていただきました。

私の勤める会社では、一部研究機能がボストン(アメリカ)にもあり、積極的に研究員交流を行っています。そのプログラムの一環として2002年に3ヶ月間ボストンで仕事をする機会を得ました。短い期間での研究ということで、初めは大きなプレッシャーを覚えたものです。しかし、思い起こせば私が寺崎研に入ったときは、ちょうど研究室の立ち上げの時期で寺崎先生以外には直接研究を指導してくださる先生や設備もなく、実験機器の選定から実験室のセッティングまで自分たちで行ったことを思い起こしました。自分で考え、周囲に伝え、行動する力を身につけることは非常に重要ですね。また、ではグローバルにプロジェクトを展開しているため、海外の研究員との会議が頻繁にあります。その場合には、プレゼンテーション、ディスカッションは英語で行われます。英語での業務が、ある日突然やってくることになりますが、もちろんトレーニングなくしてできるようにはなりません。少しでも学生のうちに英語での学会発表や講演会などに触れ、トレーニングをしておくことをお勧めします。国際的にも業績の多い寺崎研ではそのような機会が多くありますので、失敗を恐れずチャレンジしてください。

また、日本国内にいるときにはあまり感じませんが、特に海外では学位を取得するということは大きな意味があると思います。というのも、アメリカでは、学位(博士)の有無で仕事の内容に大きな違いがあることを感じたからです。今後ますます国際化が進展することを考えると、学位を取得することは重要になってくると思います。

大学院の2年間の間、楽しいことだけではなく結果が出ずに我慢の時期もありましたが、良い師に恵まれ、またよい仲間に恵まれたことは貴重な財産だと思います。時にはつらかったことも今となっては良い思い出です。

・3年生で、研究室選びで迷っている方へ

自分が興味のある研究分野に進むことも重要です。しかし、国際的にも活躍している指導教官のいる研究室で研究することは、大変意味のあることです。教室での学習と違い、研究室に配属になってからは、自ら考え、実験し、他の研究員と共有(プレゼン、ディスカッション)し、研究を進めていかなければなりません。もちろん、相談には乗ってもらえますが、寺崎研では、指導教官や先輩の姿からも研究とは何かを肌で感じることができるでしょう。また、寺崎研で行われている体内動態に関わる研究は、創薬においては探索初期から臨床研究まで関わる広い分野の一つであり、創薬研究を垣間見ることができる機会になることと思います。

・4年になって、大学院への進学を迷っている方へ

研究分野に関わらず研究を職としたい場合には、大学院で学ぶことは必須だと思います。そこで、どの研究室を選ぶのかが重要になってきます。国際的に活躍している指導教官のいる研究室か、研究に打ち込める環境(ソフト・ハード)が整備されているか、を考えてみてください。寺崎研ではそのような環境が十分に整っていると思います。特に、効率的に研究を行う上では、設備や周囲の環境というのも重要なファクターとなります。私が在籍していたころは、研究室の立ち上げ時期であったにもかかわらずスムーズに研究を進めることができたのは、設備はもちろんのこと、周囲のサポートのおかげがあったからです。

迷っている方は実際に、研究室の先生方や院生に話を聞いてみるのもいいと思います。

会社に入って感じたことですが、プレゼンテーションやディスカッションも一つのスキルであり、学生のうちにスキルを磨くことは非常に重要です。また、そのためにも学生時代にプレゼンの機会、外国人研究員の方の交流や講演会など寺崎研では、多くの機会に恵まれたことは貴重な経験だったと思います。

よい研究をすることで自身の基礎知識や実験遂行能力が向上するだけではなく、広義では研究を通して自身のものの考え方やコミュニケーション能力を磨くことにもつながると思います。

特に、国際的に活躍したいと考えている方は、博士号取得を視野に入れながら、大学院での研究に打ち込むことをお勧めします。


薬剤師の先輩からのメッセージ

上塚 朋子(Tomoko Uezuka, Pharm.D. )

1998年学部卒

現職: 聖マリアンナ医科大学病院薬剤部薬剤師

(2007年11月16日投稿)

 学部卒業後,病院勤務を経て,米国University of Tennessee, College of Pharmacy, Pharm.D. Programに留学しました.現在は米国で学んだ臨床薬学実践のために,再び日本で病院薬剤師として働いています.

 私が旧薬剤学講座を選んだのは,学部3年生時に受けた寺崎先生の薬物動態学の講義が内容・スタイルともに非常に興味深かったからです.現在,病院薬剤師として働く私にとって,TDM(Therapeutic Drug Monitoring)の基礎となる薬物動態学を教わったことは貴重な財産だと思いますが,それより大切なことを学部4年生の1年間で学んだと思っています.

それは,“しっかりと自分の頭で考えて,相手に伝わるように説明する能力”.今も変わらないと思いますが,講座での研究の生活は3年生までの講義中心の生活とは異なり,自主性が問われます.自分で研究のプロセスを意味づけて理解し,その過程で考えたアイディアを共同研究者に伝え,その先の研究の方向性をディスカッションする.このような流れの中で身に付けた問題解決能力・コミュニケーションスキルは,今の私の仕事の基本になっていると思います.

とはいえ,最初は右も左も分からず戸惑うことが多いと思います.そんなときに,アドバイスをくれたり,助けてくれたりと,そんな仲間ができたのも旧薬剤学講座での1年間でした.辛いなと思うことも時々あるでしょうが,卒業後懐かしく思い出話ができるような充実した学生生活を送れる講座だと思います.