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令和5年度「齊藤記念薬学教育研究支援基金」国際会議研究発表経費支援事業報告

令和5年度齊藤記念薬学教育研究支援基金成果報告

  • 医薬資源化学分野
  • 博士課程前期2年の課程 2年次
  • 佐藤 史都

 この度、自分自身、初となる海外で開催される国際学会に参加させていただきました。自分は、将来世界と対等に仕事をすることが目標の一つとしてあり、とても良い機会だと感じ今回のシンポジウムに参加する決意をしました。
 今までに海外へ行った経験もあまりなく、英語などまともに喋ることができない状態での渡航でした。ましてや、日本語を使った国内での学会発表は何度か経験していましたが、英語を使って発表・質疑応答を行うといったことはなかったため、渡航前はとても不安な気持ちで一杯だったのを覚えています。
 今回の台湾滞在では、シンポジウムの前日に台湾文化交流ツアーが組まれており、ガイドさんのおかげで台湾の歴史や日本と台湾のつながり(温泉に入る文化など)について深く知ることができました。台湾人と日本人のルーツは共通している部分が多いのだなと感じました。また、台湾の皆さんがとても優しく、南国のような雰囲気が素敵で、台湾がとても好きになりました。
 また今回のシンポジウムでは、自身が約1年半取り組んできた研究を発表させていただきました。私の研究では、酵素を介した生体内で行われる複雑な化学反応に関する研究を発表させていただきました。本研究を達成することで、将来的に薬の元となる化合物を生体酵素を用いてより効率的に供給できるようになることが期待されます。今回のシンポジウムでは、長崎大、北海道大、九州大、現地の大学の教員の方や学生さんも発表を行っており、分野は様々でしたが、とてもレベルが高く刺激を受けました。今までに触れていなかった薬学の各分野に触れることで、自身の分野が創薬の中で薬の元となる化合物を提供する重要な部分を担っていることを改めて理解できました。
 今回の経験を通じて成長した部分は大きく2点あります。
 1つ目は、自分の今までいた世界は、とても広い世界のごく一部であったことを強く実感できた点です。まだまだ、自分の知らない世界があり、自分自身の可能性を自分の中で大きく制限していたことに気づきました。
 2つ目は、拙い英語ながら、現地の学生と研究を通じて交流するという経験を積めた点です。日本で抱えていた英語への漠然とした不安などは今回の学会参加で少しながら払拭できました。完璧な英語を話すのは理想ではありますが、簡単な英語でも自分の考えを伝えることができるということを体感できたことで、今後以前ほどの恐怖心を持つことなく日本の外へ冒険に出かけていきたいと考えるようになりました。海外で活躍するための第一歩を踏み出せたことに強く感銘を受けています。
 まだまだ、英語表現ではもどかしい部分が多々あったので、次の海外へ行くチャンスに向けて日々の研究と英語能力の向上に励みたいと考えています。
 最後に、渡航の資金援助をして頂いた齊藤ご夫妻のお二人に深く感謝いたします。今後ともご支援の程をよろしくお願い致します。

  • 衛生化学分野
  • 博士課程前期2年の課程 2年次
  • 山田 裕太郎

 今回私は、2023年8月31日から9月1日 に台湾台北市で開催された「The 8th Taiwan-Japan Joint Conference for Pharmaceutical Sciences」に参加し、「The inhibitory effect of supersulfides on oxidative stress-induced parthanatos」というタイトルで、超硫黄分子という内在性の生理活性物質が、あるタンパク質を超硫黄化することでプログラム細胞死を抑制するメカニズムを発表しました。本研究で着目したプログラム細胞死は神経変性疾患の原因の一つであるため、本研究の遂行は新たな治療法開発につながる事が期待されます。本学会は日本と台湾の6大学が合同で薬学研究に関する発表を行う学会であり、国内会議では聴講できないような講演が多数行われました。加えて、学会前日には大学主催の文化交流に参加し、実際に台湾の文化に触れることができたほか、現地の人々と交流することができました。
 私が今回の国際会議の参加で得られた成果は主に以下の2 点です。
1つ目は、英語を通した研究発表に対する抵抗を払拭できた点です。私は本学会に参加するまで国際学会への参加はおろか海外へ渡航した経験すらなく、英語を通したコミュニケーションにあまり自信がありませんでした。しかし、本学会への参加が決まり、特に英語発表の準備に力を入れた結果、自身の研究内容を台湾の方に理解していただくことができました。これにより、自身の英語力に自信がつき現地の方々と積極的にディスカッションを行う事ができました。特に、質疑応答の時間において、自身の研究の中核となる超硫黄化の選択性について議論を行うことができ、今後の研究推進のために有意義な意見を頂くことができました。
 2つ目は、台湾の大学の友人を作り現地の価値観に触れ合うことができた点です。私は、上述の通り国際的な交流をした経験が多くありませんでした。本学会では、開催地である国立陽明交通大学の学生が非常に親身に案内をして下さり、約3日間の交流を通して親睦を深めることができました。特に、8月31日の文化交流では、台湾の歴史を含めた台湾の人々の考え方や、日本人との考え方の違いについて知ることができました。
 私は将来国際的に活躍できる創薬研究者になりたいと考えており、以上2点の経験はその目標を達成するための大きな一歩となったと感じております。
 最後に、渡航費・滞在費等を含む経済的なご支援をしてくださいました齊藤宏様・和子様ご夫妻に厚くご御礼申し上げます。今回の旅行を通して、これまでの日本での研究活動では得られなかった大変貴重な経験をさせていただきました。本経験を糧として、今後も世界で活躍できる創薬研究者になるという自身の目標を達成するため、修士課程および博士課程進学後も研究活動に邁進していきたいと考えております。

  • 生活習慣病治療薬学分野
  • 学部6年次
  • 山崎 柊紀

 今回、私は2023/09/01に台湾台北市に位置する国立陽明交通大学陽明キャンパスにて行われた「The 8th Taiwan-Japan Joint Symposium for Pharmaceutical Sciences」に参加しました。本シンポジウムでは日本と台湾の6大学における薬学系の教員および学生が参加し、有機化学、生化学、分析化学など様々な背景を有する方々と自身の研究分野について議論をしました。そこで、私は「Functional characterization of 31 CYP2B6 rare variants identified in 8,380 Japanese individuals」というタイトルで、日本人集団において同定された薬物代謝酵素CYP2B6のレアバリアントについて、酵素反応速度論的な機能解析を行った成果を発表しました。今回のシンポジウム参加を通じて以下2点の成果が得られたと感じております。
 1点目は国内外の幅広い背景を有する研究者の中で学術成果の共有および議論を行い、自分の研究の立ち位置などを見直すことができた点です。私が研究を行っている「ゲノム薬理学」は薬物代謝酵素などの遺伝子多型と個人の代謝活性という表現型の関係性を解析し、臨床応用する分野です。質疑応答の際には日本人集団におけるレアバリアントの頻度や代謝活性の分布について質問をいただきました。本研究の成果を臨床に応用する際には、日本人におけるCYP2B6低活性群の割合や副作用発現が起きやすくなるレアバリアントの同定が重要であると再認識しました。本シンポジウムは自分の研究を多くの視点から再検証する良い機会となりました。この経験を研究活動に活かし、本研究をより発展させていきたいと思います。
 2点目は研究における共通言語である英語を通じて、台湾の学生および教員と研究内容に関する議論やコミュニケーションを取ることができたという点です。初の海外発表であるため、シンポジウム参加前は自分の語学力などに非常に不安を感じていました。そのため、研究室内での発表練習や本研究室の教員方からの支援を通じて、英語での発表を上達させる努力をしてきました。シンポジウム当日では非常に緊張しましたが、練習の成果が出て、今までで最も質の高い発表をすることができたと自負しております。質疑応答では全て完璧に文章を聞き取ることができた訳ではありませんが、単語が部分的に聞こえたため、ある程度妥当な質疑応答ができました。今回の英語発表は自分が想像していたものよりも成功し、自身の語学力や学術成果のプレゼンにおける自信に繋がりました。
 最後に、渡航費等の経済的な支援を頂きました齊藤宏様および和子様ご夫妻に厚く御礼申し上げます。国外の学生・教員と深く研究について議論するという、国内学会では得がたい貴重な経験をすることができました。今後参加予定の国際学会に加えて、病院薬剤師として就職後の学術成果発表に今回の経験を活かしてまいります。

  • 合成制御化学分野
  • 博士課程前期2年の課程 2年次
  • 嶋林 春樹

 今回私は、10月1日から10月4日までフランスのニースにあるコート・ダジュール大学で開催された「28th French-Japanese Symposium on Medicinal & Fine Chemistry」といった国際学会に参加し、「Aerobic Oxidative Dealkylation of tert-amines with Nitroxyl Radical catalysis」といったタイトルで第三級アミンに対して有機分子を利用して触媒的かつ空気酸化的に脱アルキル化を行うことで第二級アミンが得られる反応を確立したことを発表しました。本反応は薬の合成ルート終盤にて利用することで、多様な種類を作り分けできる反応と考えています。また、本学会は研究発表だけでなく日仏交流をも目的としており、コート・ダジュール大学主催の文化交流に参加し、フランスの文化や歴史を学びました。この国際学会に参加して得られたことを2つ紹介いたします。
 1つ目は、英語を利用した研究発表への抵抗感を払拭することができたことです。私は今まで国内の学会で口頭やポスターで6回程発表した経験があったものの、国際学会への参加経験はありませんでした。加えて、私自身海外に行ったことが無く、実践的な英語を利用した経験が無かったため、渡航前は不安な気持ちで一杯でした。しかし、当日の発表等では拙い英語ながらも自身の質問が発表者に伝わることが判明し、漠然としたこの不安は解消されました。この経験のおかげで、今後海外で活躍するための第一歩を踏み出すことができたと思います。
 2つ目は、海外の学生や教員と学術成果の報告と共有を通して自身の研究の立場を見直すことができたことです。発表内容の反応の天然物アルカロイドの基質適用範囲や具体的な反応を挙げて適用可能かどうか質問されることが多く、本反応が思っている以上に求められているものであると感じました。そのため、この研究の論文を執筆する意欲が渡航前と比べてかなり上昇し、自身の研究のモチベーション向上にもつながりました。
 最後に、渡航費等の経済的な支援をしてくださった齊藤ご夫妻に感謝申し上げます。海外の学生や先生方と研究に対して議論できたことは貴重な体験でした。2年後に合成制御化学分野主催で、同様の国際学会を開催する予定ですので、日仏交流の要として活躍するとともに、本経験を活かし、世界で活躍できる研究者を目指して博士課程に進学後も引き続き研究活動に鋭意取り組んで参ります。

  • 薬理学分野
  • 博士課程前期2年の課程 1年次
  • 横井 太紀

 この度、アメリカ・ワシントンDCで開催された”Society for Neuroscience”にてポスター発表を行いました。本学会は、神経科学で世界最大規模の学会であり、トップジャーナルに載るような研究も先立って発表されています。そのため、自身の研究発表を行うという目的以外にも、世界中の神経科学の研究者が今どのようなテーマに興味があり、どのようなアプローチで研究を行っているのか、という情報を集めたいと考え、参加することを決めました。
 私自身はこれまで海外へ行った経験が乏しく、英語によるコミュニケーションもままならないという状態だったため、渡航には不安を抱えていました。発表・質疑応答に関しては研究室の先輩・先生方と何度もトレーニングさせていただいて、特に質問・回答は無駄を省いて、単語の繋ぎ合わせレベルでもいいので簡潔に話すべきとの指導をいただきました。
実際に学会会場に着いて、まず驚いたのは会場の大きさでした。本学会は5日間に渡って一万演題以上が発表されましたが、広大なホールに敷き詰められたポスターと企業ブースには圧倒されました。参加者も世界中から集まってきているという様相で、逆に言えば不慣れな英語も臆せずに話すことができる現場でした。5日間を通して感じたのは、拙い英語であっても明瞭に話せば、研究に関する議論は成立するということでした。また、情報収集という目的においては、非常にレベルの高い発表が数多くある一方で、実は自分のテーマと重複している内容はほとんどなく、神経科学という世界の広さを実感するとともに、まだまだ探索する余地が残されているということも感じました。
 私の発表は、複数の異なる記憶がどのような特徴に基づいて脳で安定化されているか、という内容でした。発表日は5日目で、多少は英語のコミュニケーションに慣れた頃だったこともあり、エッセンスを伝える発表ができたと思います。質疑応答では、事前に研究室の先輩・先生方から指導を受けた内容をもとに相手の質問にまずYes/Noを言い、簡潔な受け答えを意識しました。この内容の論文を執筆中だったこともあり、近い分野の専門家からアドバイス・感想を聞くことができたのは非常に良い機会でした。今回のフィードバックを元に、より科学的に意義の大きい論文にできると考えています。
 以上が今回の学会参加による成果であり、この経験を通して成長できたと思う点が2点あります。1点目は、世界がいかに広いかを実感できた点です。単に神経科学という分野がカバーする領域が大きいということに加えて、それぞれの研究内容が特に専門化、高度化しており、自分がこれから競っていく相手のレベルの高さを知りました。一方で、実験技術自体は、私が所属している研究室でも世界最先端の研究が可能であるということを知り、今の自分にできる実験・解析を着実に積み重ねていこうという気持ちになりました。
 2点目は、英語によるコミュニケーション能力が向上した点です。特に発表に関して、無駄なく話す・質問に端的に答えるといった、簡潔かつ明瞭な受け答えをすることにより、相手に伝わる発表ができることを知りました。この能力自体は国内学会でも求められますが、非ネイティブが英語で発表するという状況では、より意識して話すべきだと分かりました。
今回の経験で、英語にしても研究にしても、自分はまだまだ未熟であることを思い知らされました。次に国際学会で発表する機会に向けて、これからも自己研鑽に励みたいと考えています。
 最後に、渡航費・滞在費の経済的援助をしてくださった齊藤ご夫妻に感謝申し上げます。本基金の支援により、自分の中で世界観が変わるような、貴重な経験を得られました。最近の情勢として米国への渡航費が大きく上がっていたこともあり、本基金の恩恵を強く感じております。今後とも是非ご支援の程をよろしくお願い致します。

  • 分子設計化学分野
  • 博士課程前期2年の課程 2年次
  • 築地 健人

 今回私は、2024年1月3日から5日に台湾南投県の日月潭教師會館で開催された「2024 Bowei Research Conference」に参加し、「Stereoselective Hydroxyallylation of Cyclopropenes via NHC Catalysis of Enolized Homoenolate」というタイトルで、天然物や医薬品の合成に重要なシクロプロパン類の立体選択的な合成手法の開発についてのショートトークとポスター発表をしました。本国際会議は世界トップクラスの招待講演者に加え、参加者も組織委員会に推薦を受けた者のみに限られており、国内の学会では聴講することができないような講演を聞くことができました。また、現地の学生との交流や台湾の文化に触れるなど大変貴重な経験をすることができました。私が今回の国際会議に参加することで得られた成果としては、大きく次の2点が挙げられます。
 1点目は、研究内容に関する議論やコミュニケーションを、英語を用いてとることへの抵抗感が払拭できたという点です。私は今回が初めての海外渡航ということもあり、英語を通じたコミュニケーションに大きな不安を抱えていました。しかし、研究室の先生方の支援のもとで、本国際会議に向けての発表練習に力を入れたところ、発表当日は非常に緊張しましたが、自身の研究について堂々と発表することができました。ショートトークの後やポスター発表の場では多くの方から声をかけていただき、有意義なディスカッションをすることができました。また、今回の発表に関して、ポスター賞を頂くことができました。
 2点目は、台湾や韓国などの学生と交流することで多くの刺激を受けることができた点です。研究はもちろんのこと、価値観や積極性など様々な点で日本との違いがあり、それらを知ることで自身を大きく成長させることができたと感じています。特に、交流した学生たちの多くは研究環境を変化させることに躊躇がなく、自分の興味を持った分野に積極的に挑戦しており、視野を狭めず、多くの選択肢を持つことの大切さに気づくことができました。
 今回の国際会議を通して、大変貴重な経験ができ研究者として大きな一歩を踏み出せたと感じております。今後は、英語力の向上や日々の研究に一層力を入れていき、国際的に活躍できる研究者を目指していきたいと思います。
 最後に、渡航費などの経済的な支援をいただきました齊藤宏様、和子様に厚く御礼申し上げます。