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井上飛鳥教授らの研究グループは、エクリン汗腺に発現する機能的嗅覚受容体を発見しました。

【発表のポイント】

  • ヒト体表の広範囲に汗を出すエクリン汗腺が分布しています。発汗は体温調節のほか皮膚の恒常性を維持するために必要な生理機能です。そのため、汗は多すぎても(多汗症)少なすぎても(無汗症)ヒトの健康を損ないます。
  • ところが発汗を制御する治療の選択肢は非常に限られています。
  • 無汗症には体の広範囲を占める無汗部と一部の正常な発汗部があります。本研究では無汗症の汗がでている皮膚、汗がでていない皮膚からエクリン汗腺のみを回収し、そこに発現しているmRNA1)の種類を網羅的に解析し比較することで発汗制御に関わる分子を調査しました。そしてエクリン汗腺に嗅覚受容体2)OR51A7とOR51E2が発現していることを見出しました。
  • 中でもOR51A7がβイオノン3)という香料に反応することが分かりました。βイオノンを塗布した皮膚で軸索反射性発汗を評価すると、女性の発汗は減少し、男性の発汗は増加しました。この研究は発汗を制御する新規創薬に貢献すると期待されます。

【概要】
 井上飛鳥教授らの研究グループは、エクリン汗腺が嗅覚受容体を発現し、ある種の香料の皮膚への塗布によって発汗を調節できることを発見しました。発汗異常を来す代表的な疾患として多汗症、無汗症があります。汗の量は多すぎても少なすぎてもヒトの健康を損ない、日常・社会生活にも大きな支障を来します。しかしながら発汗を制御する方法は限られています。本研究では無汗症における汗のでている皮膚と汗のでていない皮膚のエクリン汗腺に発現するmRNAの種類を比較し、発汗制御に関わる分子を解析しました。その結果、エクリン汗腺における嗅覚受容体OR51A7とOR51E2の発現に注目しました。特にOR51A7はβイオノンに反応し、βイオノンを塗布した皮膚の軸索反射性発汗試験で女性の発汗を減少させ、男性の発汗を増加させました。この研究は発汗を制御する新規創薬に貢献すると期待されます。本研究成果は米国皮膚専門誌JID Innovationsに掲載されました。

詳細(プレスリリース本文)

【問い合わせ先】

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
電話 022-795-6861
E-mail iaska@tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 総務係
電話 022-795-6801
E-mail ph-som@grp.tohoku.ac.jp