メニュー 閉じる

斎藤芳郎教授らの研究グループは、認知症進行リスクと相関するタンパク質を発見しました。

【発表のポイント】

  • 血液中および脳脊髄液中の全長セレノプロテインP(注1)濃度が認知症進行リスクと相関することを明らかにしました。
  • 血液中と脳脊髄液中のセレノプロテインP濃度が相関することを発見しました。

【概要】
 必須微量元素であるセレン(注2)は、人間にとって必要不可欠な栄養素であり、生体内でセレン含有タンパク質(セレノプロテイン)の合成に用いられることで、活性酸素の除去に重要な役割を担っています。脳へのセレンの輸送には、肝臓から放出されるセレノプロテインP (SeP) が重要な役割を担っていることが知られています。セレンまたはSePの減少は、脳内の抗酸化機能低下に伴って神経障害を誘導することが知られていますが、過剰なSePと認知症進行のリスクはほとんど議論されていませんでした。
 東北大大学院薬学研究科の斎藤芳郎教授とモデナ・レッジョ・エミリア大学 (イタリア)のMarco Vincenti教授らの国際共同研究チームは、軽度認知症の診断をうけた患者群を対象に、血清または脳脊髄液中の全長SeP濃度を測定する前向きコホート研究(注3)を実施しました。斎藤教授らが開発した手法を用いて、血中および脳脊髄液中の全長SeP濃度を測定し、得られた結果を統計学的手法によって解析したところ、全長SeP濃度が高くなると軽度認知症から認知症へと進行するリスクが増加することを見出しました。特に、軽度認知症患者では、脳脊髄液中のSeP濃度とその後の認知症進行リスクが高く相関することを発見しました。
 本研究から得られた結果は、軽度認知症患者に対する認知症発症リスクを予測するマーカーとしての応用可能性を示すものであり、SePによる中枢神経への作用を考える上で重要な基盤です。今後、SePをターゲットとした中枢神経への役割を詳細に理解されることが期待されます。
 本研究成果は5月31日、国際科学誌Scientific Reports に掲載されました。

詳細

【問い合わせ先】

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
教授 斎藤芳郎
電話 022-795-6870
E-mail yoshiro.saito.a8@tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 総務係
電話 022-795-6801
E-mail ph-som@grp.tohoku.ac.jp